玉掛けの合図とは?手の合図の一覧と、笛・無線で合図するときの注意

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片手を上げて合図する作業者とトラッククレーンでつった鋼材

玉掛けの合図は、会社(事業者)が現場ごとに決め、指名された1人の合図者が出すものです。運転者も、まわりの作業者も、その合図に従います(クレーン等安全規則第25条)。

よく使う手の合図には、呼出し、巻上げ、巻下げ、停止、急停止、作業完了などがあります。この記事では、厚生労働省の教材で形を確かめられた合図だけを一覧にします。あわせて、笛や無線で合図するときの注意と、玉掛け技能講習での習い方もまとめます。

この記事の法令は、2026年10月9日に e-Gov 法令検索 と厚生労働省の法令等データベースで確かめた内容です。合図の形と注意点は、厚生労働省の技能講習補助教材などで同じ日に確かめました。合図の形は現場ごとに決まるので、働く現場の決まりを必ず確かめてください。

玉掛けの合図は誰が決めて、誰が出す?

玉掛け・クレーン作業の基本合図一覧(手合図・笛合図・指差し呼称)
巻上げ・巻下げ・水平移動・停止・急停止の基本合図と地切り確認

合図を決めるのは会社(事業者)で、合図を出すのは会社が指名した合図者です。

クレーン等安全規則第25条は、クレーンを使って作業をするとき、事業者に次のことを求めています。

  • クレーンの運転について「一定の合図を定め」ること
  • 合図をする人を指名して、その人に合図をさせること
  • 指名された人は、その合図をしなければならない(第2項)
  • 作業をする労働者は、その合図に従わなければならない(第3項)

ただし、運転者が1人だけで作業をするときは、この決まりはかかりません。

ほかのクレーン等にも、同じ形の決まりがあります。

機械 根拠の条文
クレーン クレーン等安全規則 第25条
移動式クレーン クレーン等安全規則 第71条
デリック クレーン等安全規則 第111条
揚貨装置(船のクレーン) 労働安全衛生規則 第467条(揚貨装置ごとに合図者を指名)
建設用リフト クレーン等安全規則 第185条

根拠:クレーン等安全規則、労働安全衛生規則(2026年10月9日確認)

運転者は合図に従う

厚生労働省の床上操作式クレーンの教材は、第25条の決まりがあることから、運転者は合図者の合図を確かめて、それに従って運転する必要があるとしています。合図を待たずに、先を読んで動かす「見込み運転」はしてはいけません。

一方で、同じ教材は、合図どおりに動かすと危ないと思ったときは合図者に確かめることも求めています(技能講習補助教材(床上操作式クレーン)p.93)。

合図者に必要な資格は決まっている?

第25条は、合図者を「指名」することを求めていますが、合図者に必要な資格までは書いていません。

厚生労働省の技能講習補助教材(玉掛け)(p.79)では、合図者は合図だけでなく玉掛け作業にも慣れておき、クレーンの定格荷重や動ける範囲、性能をよく分かっておくこととされています。

なお、つり上げ荷重1トン以上のクレーン等で荷を掛け外しする「玉掛け」そのものには、玉掛け技能講習の修了などが必要です。1トン未満なら特別教育で足ります。境目は玉掛けの特別教育と技能講習の違いにまとめています。

合図者は1人だけ

厚生労働省の玉掛けの教材によると、運転者に合図を出すのは指名された合図者1人だけです。

移動式クレーンや床上操作式クレーンの教材では、運転者は次のようなときに運転を止めることとされています。

  • 合図がはっきりしないとき
  • 決められた合図でないとき
  • 2人以上から合図を受けたとき
  • 指名された合図者ではない人が合図をしたとき

出典:技能講習補助教材(小型移動式クレーン)p.100、技能講習補助教材(床上操作式クレーン)p.35・p.93

玉掛けの手の合図にはどんなものがある?一覧表

代表的なのは、呼出し・位置の指示・巻上げ・巻下げ・水平移動・停止・急停止・作業完了です。

厚生労働省の「まんがでわかる クレーン・玉掛け作業の安全衛生」(日本語版)には、一般的な「手による合図法」として15種類の合図がイラストで載っています。この教材は、一般社団法人日本クレーン協会の「クレーンの運転のための合図」を参考にしたと書いています。

下の表は、そのうち玉掛けでよく使い、イラストから形をはっきり読み取れたものです。動作の説明は、この記事でイラストを言葉にしたものです。

合図 動作 使う場面
呼出し 片手を高く上げる 運転者に、これから合図をすると知らせる
位置の指示 腕をのばし、指先でその位置を指す フックを動かしたい場所を示す
巻上げ 片手を上げ、頭の上で手を回して輪をえがく フックや荷を上げる
巻下げ 腕を前にのばし、手のひらを下に向けて下へ振る フックや荷を下げる
水平移動 腕をのばし、手のひらで動かす方向へあおぐ 荷を横に運ぶ
停止 手のひらを開いて上げ、その手をにぎる 動きを止める
急停止 両手を開いて高く上げ、左右に大きく振る 危ないとき、すぐに止める
作業完了 敬礼をする形と、両腕を頭の上で「×」に組む形が描かれている 作業の終わりを伝える

出典:厚生労働省「まんがでわかる クレーン・玉掛け作業の安全衛生」p.8(2026年10月9日確認)

同じ一覧には、ほかに「補巻上げ」「補巻下げ」「ジブ上げ」「ジブ下げ」「微動」「転倒」「ジブの伸縮」もあります。補巻(補助のフック)を動かすとき、ジブ(腕)のあるクレーン、ゆっくり動かすときに使う合図です。形が細かいので、この記事では表に入れていません。講習の教本と、現場の合図表で確かめてください。

合図は現場で決めたものに従う

講習で習う合図は基本で、実際に使う合図は現場で決めたものです。

厚生労働省の技能講習補助教材(玉掛け)(p.78)は、事業場や現場によって合図の方法に違いがあるとしています。そのため、玉掛けをする人も運転者も、その現場で決めた合図を確かめておく必要があります。

同じ教材は、一般には手による合図が広く使われていて、決められた動作をはっきり行うことが大切だとしています。

建設現場のように、いくつもの会社が同じ場所で働く場合は、元請(特定元方事業者)が合図を統一して決め、下請の会社に知らせることになっています(労働安全衛生規則第639条)。

厚生労働省の玉掛け作業の安全に係るガイドライン(平成12年2月24日 基発第96号)も、作業の前の打合せで、使う合図を具体的に指示し、関係する作業者に確かめさせるよう求めています。

まんが教材には、クレーンごとにブザーの音が違う現場もあるので、作業の前にどのクレーンがどの音かを確かめよう、という場面もあります。

笛の合図はどう吹く?

国の資料では、笛の吹き方の決まりは確かめられませんでした。笛は、手の合図などと一緒に使う補助です。

厚生労働省の技能講習補助教材(小型移動式クレーン)(p.100)は、合図には手による合図や旗による合図などがあり、必要に応じて笛を補助として使うことがあるとしています。そのうえで、笛だけで合図すると事故につながりやすいため、笛だけの合図はしないよう求めています。

笛の吹き方(長く吹く、短く何回吹くなど)は、この記事を書くために見た厚生労働省・労働局の資料には載っていませんでした(2026年10月9日確認)。笛を使う現場では、その現場の合図表で吹き方を確かめてください。

旗(小旗)を使う合図も、玉掛け技能講習規程の実技の範囲に「手、小旗等を用いて行う合図」として入っています。ただ、旗の振り方を説明した国の資料は確かめられなかったため、この記事では書いていません。

無線(トランシーバー)で合図するときの注意は?

無線で声の合図をするときは、運転者が合図をくり返して言う「復唱」を確かめることが大切です。

厚生労働省の技能講習補助教材(玉掛け)(p.79)によると、高い建物の工事現場や見通しの悪い場所では、無線機を使った声による合図も多く使われています。同じ教材にある、声の合図のポイントは次の3つです。

  • 合図は、どこを・どれだけ・どう動かすか(部位・程度・動作)の順に、続けて言うのが基本
  • 運転者は、受けた合図を声に出してくり返す(復唱する)のがよい
  • 実際に働く現場で使っている言葉を理解しておく

小型移動式クレーンの教材でも、運転者は合図者の合図に声を出して復唱し、合図に従って運転するとしています(技能講習補助教材(小型移動式クレーン)p.42・p.53)。

声の連絡が一方通行だった事故の例

厚生労働省の「職場のあんぜんサイト」には、声の連絡がうまくいかなかった事故の例が載っています。

砂防ダムの工事でケーブルクレーンを使っていたとき、運転する場所から作業の場所が見えず、マイクとスピーカーで連絡していました。合図者が巻上げの合図を出したあと、停止の合図を出さなかったため、ワイヤロープが巻き切られて切れ、落ちたバケットで合図者本人が亡くなりました。事例では、巻過ぎを防ぐ仕組みがなかったことも原因に挙げられています。

対策の1つとして、運転者が合図者の指示を復唱するなど、両方向で連絡することが挙げられています(職場のあんぜんサイト 労働災害事例、2026年10月9日確認)。

無線機のチャンネルの決め方など、機械の使い方を定めた国の資料は確かめられませんでした。現場の決まりに従ってください。

合図者が気をつけることは?

合図者は、運転者から見やすい安全な場所に立ち、玉掛けが終わったことや人がいないことを確かめてから合図します。

厚生労働省の技能講習補助教材(玉掛け)(p.79)と、玉掛け作業の安全に係るガイドライン(第3の4(3))にある注意を、作業の順にまとめます。

場面 気をつけること
立つ場所 運転者と玉掛け者の両方が見え、作業の様子がよく見える、安全な場所に立つ
巻上げの前 玉掛けが終わったことと、玉掛け者がよけたことを確かめてから合図する。運ぶ道に人が入っていないかも確かめる
地切り ワイヤロープが張ったところでいったん止め、掛け方が安全か確かめてから、もう一度巻上げの合図をする
つり方 荷はまっすぐ上につる。斜めにつらないことを確かめて合図する
運ぶとき 運ぶ方向と下ろす場所を運転者に示し、なるべく先に立って合図する。荷の下に人が入っていないか見続ける
荷が不安定になったとき すぐに運転者に合図し、作業を止める
巻下げ 床(まくら)からわずかに離れた高さでいったん止め、安全に置けることを確かめてから巻下げの合図をする
作業の終わり フックを2メートル以上の高さに巻き上げてから、玉掛け者・合図者・運転者で作業が終わったことをたがいに確かめる

ガイドラインでは、危ないと感じたときに運転者へ作業の中断を伝える方法も、作業の前の打合せで決めておくこととされています。

玉掛け技能講習では合図をどう習う?

学科の「玉掛けの方法」で合図の方法を習い、実技で「クレーン等の運転のための合図」を1時間行います。

玉掛け技能講習規程(昭和47年労働省告示第119号)第2条で、合図は次のように入っています。

区分 科目 合図に関係する範囲 時間
学科 クレーン等の玉掛けの方法 玉掛けの一般的な作業方法、玉掛用具の選び方と使い方、基本動作とならんで「合図の方法」 7時間(科目全体)
実技 クレーン等の運転のための合図 手、小旗などを使う合図 1時間

講習の最後の修了試験でも、実技試験は実技講習の科目について行うので、合図も試験の範囲です(同規程第5条)。試験のくわしいことは、玉掛け技能講習の試験と計算問題にまとめています。

学科の「玉掛けの方法」の練習には、このサイトの問題も使えます。

法令・告示や厚生労働省の資料などをもとに作った練習問題は、学科試験の練習問題(30問)にまとめています。選択肢を押すと、その場で答えと解説が見られます。

合図の実技が免除になる人

講習規程の第3条で、次の人は合図の実技を受けなくてよいことになっています。

免除を受けられる人 免除される科目
クレーン・デリック運転士免許、移動式クレーン運転士免許、揚貨装置運転士免許を持っている人 力学に関する知識(学科)と、運転のための合図(実技)
床上操作式クレーン運転技能講習か小型移動式クレーン運転技能講習を修了した人 力学に関する知識(学科)と、運転のための合図(実技)
クレーンや移動式クレーンなどの運転の業務に6か月以上ついた経験がある人(細かい範囲は規程に書かれている) 運転のための合図(実技)だけ

出典:玉掛け技能講習規程第3条(2026年10月9日確認)

クレーンの運転の講習や免許では、もともと合図も習うためです。たとえば小型移動式クレーン運転技能講習の実技にも、合図の科目があります(クレーン等安全規則第245条)。

このほか、つり上げ荷重1トン未満のクレーン等の玉掛けの業務に6か月以上ついた経験がある人の講習(同規程第4条第2項)にも、合図の実技は入っていません。

免除は、申し込みのときに免許や修了証の写しを出して決まるのがふつうです。受ける講習所の案内で確かめてください。

実技講習で合図を使う流れの例

福井労働局は、玉掛け技能講習の実技のすすめ方の手本(実技実施手順書のモデル)を公開しています。その中で、受講者が合図を出す場面は次の順になっています。

順番 合図 すること
1 呼出し、位置の指示 フックを荷の真上まで誘導する
2 微動巻下げ フックを玉掛けしやすい高さまで下げる
3 微動巻上げ 地切りの直前でいったん止め、フックが重心の真上か、ロープに異常がないかを確かめる
4 微動巻上げ 地切りをする(高さ20cm)
5 巻上げ 運ぶのに合った高さ(50cm程度)までつり上げる
6 水平移動、停止 荷を運び、下ろす場所の真上で止める
7 巻下げ、停止 床に置く直前でいったん止める
8 微動巻下げ、停止 荷を床に置く
9 巻下げ、停止 ロープを外しやすい位置までフックを下げる
10 作業終了の合図 玉掛け用具を外して片付けたあと

出典:福井労働局「玉掛け技能講習 実技実施手順書のモデル」(2026年10月9日確認)。実際の講習の順番は、講習所によって違うことがあります。

講習では、教わった合図を大きく、はっきり出す練習を大事にしてください。現場に出たら、最初にその現場の合図を確かめるところから始めます。

まとめ

  • 合図は会社(事業者)が決め、指名された合図者が出す。運転者もまわりの作業者も合図に従う(クレーン等安全規則第25条・第71条・第111条など)
  • 運転者への合図は、指名された1人が出す。合図がはっきりしない、2人以上から合図が来たなどのときは、運転者は運転を止める
  • 手の合図には、呼出し・位置の指示・巻上げ・巻下げ・水平移動・停止・急停止・作業完了などがある。ただし、使う合図は現場で決めたものに従う
  • 笛は補助で、笛だけの合図はしない。無線で声の合図をするときは、運転者の復唱を確かめる
  • 玉掛け技能講習では、学科「玉掛けの方法」で合図の方法を、実技で合図を1時間習う。免許やクレーンの技能講習がある人は、合図の実技が免除

講習の時間と費用、都道府県ごとの講習所は、玉掛け技能講習の時間と費用から調べられます。

よくある質問

玉掛けの合図は誰が出しますか?
会社(事業者)が指名した合図者が出します。クレーン等安全規則第25条で、事業者はクレーンの運転について一定の合図を決め、合図をする人を指名して、その人に合図をさせなければなりません。厚生労働省の教材でも、運転者に合図を出すのは、指名された合図者1人だけとされています。
合図の形は全国共通ですか?
法令は、合図を決めることを事業者に求めていますが、合図の形そのものは決めていません。厚生労働省の教材も、事業場や現場で合図の方法が違うため、現場で決めた合図を確かめる必要があるとしています。講習で習う合図は基本として覚え、現場ではそこで決めた合図に従います。
笛だけで合図してもいいですか?
厚生労働省の小型移動式クレーンの教材では、笛は手の合図などを助けるために使うものとされています。笛だけで合図すると事故につながりやすいため、笛だけの合図はしません。笛の吹き方を国が決めた資料は、この記事を書くときには見つかりませんでした。
無線(トランシーバー)で合図するときの注意は?
厚生労働省の玉掛けの教材では、無線機を使う声の合図は、運転者の復唱を確かめることが大切とされています。声の合図は、どこを・どれだけ・どう動かすか(部位・程度・動作)の順に、続けて言うのが基本です。
玉掛け技能講習で合図はどのくらい習いますか?
学科の「玉掛けの方法」(7時間)の中で合図の方法を習い、実技では「クレーン等の運転のための合図」を1時間行います(玉掛け技能講習規程第2条)。クレーンの運転士免許や、床上操作式クレーン・小型移動式クレーンの技能講習を持っている人は、合図の実技が免除されます。