玉掛けワイヤロープの選定・安全係数6・廃棄基準(素線切れ10%・摩耗7%・キンク)
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玉掛け技能講習の学科試験(「玉掛けの方法」「関係法令」「力学」)でも、実技試験の「ワイヤロープの選定・点検」でも、必ず問われるのがワイヤロープの安全係数・つり角度・廃棄基準(不適格なワイヤロープの使用禁止)です。
この記事では、クレーン等安全規則(昭和47年労働省令第34号)の条文をもとに、試験で狙われる数値の根拠と、現場でのワイヤロープ・ベルトスリングの選定手順をまとめました。
1. 玉掛け用具の安全係数(クレーン則第213条〜第214条)
玉掛け用具は、いきなり切れて荷が落下しないよう、「切断荷重(破断荷重)」に対して十分な余裕(安全係数)を持たせた「使用荷重(基本安全荷重)」の範囲内で使わなければなりません。
クレーン等安全規則では、ワイヤロープ、つりチェーン、フック・シャックルの安全係数の最低基準を次のように定めています。ベルトスリングの値は法令ではなく、日本クレーン協会規格によるものです(厚生労働省の技能講習補助教材より)。
| 玉掛け用具の種類 | 安全係数 | 根拠条文 | 1本あたりの基本使用荷重の求め方 |
|---|---|---|---|
| 玉掛け用ワイヤロープ | 6以上 | クレーン則 第213条 | 切断荷重 ÷ 6 |
| 玉掛け用つりチェーン | 5以上(一定の伸び・強度要件を満たすものは4以上) | クレーン則 第213条の2 | 切断荷重 ÷ 5(または4) |
| フック・シャックル | 5以上 | クレーン則 第214条 | 切断荷重 ÷ 5 |
| ベルトスリング | 6以上(ベルト部分。金具付きの金具は5以上) | 法令に規定なし(日本クレーン協会規格) | 切断荷重 ÷ 6 |
ワイヤロープ1本の基本使用荷重の計算例
たとえば、切断荷重が 90 kN(約9.2トン) の玉掛け用ワイヤロープがあるとき、安全係数は 6 なので、1本で垂直に吊れる基本使用荷重は次のとおりです。
- 1本あたりの基本使用荷重 = 切断荷重 90 kN ÷ 安全係数 6 = 15 kN(約1.5トン)
2. つり角度(原則90度以内)と張力・モード係数
荷を2本以上のワイヤロープで吊るとき、ロープ同士が開く角度(つり角度)が大きくなるほど、ロープ1本にかかる張力(引っ張られる力)は大きくなります。
| つり角度 | 張力倍率(1本にかかる力の増え方) | 2本吊りのモード係数 | 現場・試験での評価 |
|---|---|---|---|
| 0度(垂直2本) | 1.00倍 | 2.00 | 理想(ただし1か所掛けは荷が傾きやすい) |
| 30度 | 1.04倍 | 1.93 | 良好 |
| 60度 | 約1.155倍(教材の表は1.16) | 1.73 | 半掛けつりやクランプなど、個別の作業で原則とされる上限 |
| 90度 | 1.41倍 | 1.41 | 張力が約4割増加。ガイドラインの原則の上限(つり角度は原則90度以内) |
| 120度 | 2.00倍 | 1.00 | 危険(2本で吊っても1本ずつに荷の全質量と同じ張力がかかる) |
つり角度を広げすぎてはいけない理由
- つり角度60度のとき、2本吊りで吊れる最大質量は「1本の基本使用荷重 × 1.73(=2 × cos30°)」です。
- 逆に、質量 W の荷を2本吊り(つり角度60度)するときにロープ1本にかかる張力 T は、T =(W ÷ 2)× 1.16 となります(計算値は約1.155、教材の表の値は1.16)。
- もしつり角度が 120度 になると、張力倍率が 2.0倍 になるため、2本で吊っているにもかかわらずロープ1本あたりに荷の全質量と同じ張力がかかります。さらに水平方向に荷を締め付ける力(圧縮力)が強く働き、荷崩れやハッカー・フックの外れを招きます。国のガイドラインはつり角度を原則90度以内とし、2本4点の半掛けつりやクランプを使う作業などは60度以内としています。
より詳しい張力の計算ステップや例題は、玉掛け技能講習の学科・実技試験と計算問題で解説しています。
3. ワイヤロープの廃棄基準(クレーン則第215条・4つの使用禁止条件)
クレーン等安全規則第215条は、次の4つのどれか1つにでも当てはまるワイヤロープを玉掛けに使ってはならないと定めています。実技試験の「ワイヤロープの点検」でも、この4項目を指差し呼称しながら確認します。

| 号 | 法令の使用禁止基準(廃棄基準) | 覚えるべき数値・注意点 |
|---|---|---|
| 一(イ) | ワイヤロープ一より(1ピッチ)の間において、素線(フィラ線を除く。)の数の 10パーセント以上 の素線が切断しているもの | 6×24(総素線数144本)なら1よりで15本以上、6×37(総素線数222本)なら23本以上切れていれば使用禁止。 |
| 二(ロ) | 直径の減少が公称径の 7パーセントを超える もの | たとえば公称径 12 mm のワイヤロープなら、摩耗で直径が 11.16 mm未満(減少量0.84 mm超)になったら使用禁止。 |
| 三(ハ) | キンクしたもの | ロープの輪(ループ)が引き絞られてできた折れ曲がり。一度キンクしたロープは曲がりを直して使わず、即廃棄。 |
| 四(ニ) | 著しい形崩れ又は腐食があるもの | 扁平(つぶれ)、芯抜け、鳥かご状の変形、赤さびによる腐食・ピッチの伸びがあるものは使用禁止。 |
学科試験でよく出る引っかけパターン
-
「10%」と「7%」の入れ替え
- ○ 正しい:素線切断は 10%以上、直径減少は 7%超
- × 引っかけ:「素線切断が7%以上」「直径減少が10%を超えるもの」と数字を逆にする選択肢が毎回のように出題されます。「素線(そせん=10)は10%、直径(ナナメに測る=7)は7%」と語呂で覚えると確実です。
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「フィラ線を除く」の意味
- 素線のすき間を埋める細い「フィラ線」は強度計算の素線数に含めません。「フィラ線を含む」となっていれば誤りです。
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エンドレスでないロープのアイ(輪)の加工(クレーン則第219条)
- フックに掛けるアイ(玉)の部分は、アイスプライス(すべてのストランドを3回以上編み込んだ後、各ストランドの素線の半数を切り、残りをさらに2回以上編み込む。4回以上編み込んだ場合は1回以上)、圧縮どめ(ロック加工=アルミクランプ管による圧着)、またはこれらと同等以上の強さを保持する方法によるものでなければなりません(同条第2項)。ワイヤクリップ止めを名指しした定めはありませんが、これらと同等以上の強さを保持できなければ使えません。
4. つりチェーン・金具・繊維ベルト(ベルトスリング)の廃棄基準(クレーン則第216条〜第218条)
ワイヤロープ(第215条)とあわせて、つりチェーン(第216条)、フック・シャックル等の金具(第217条)、繊維ロープ・繊維ベルト(第218条)の使用禁止基準も、学科試験の法令・方法科目でよく並べて出題されます。
| 用具の種類 | 使用禁止となる基準 |
|---|---|
| 玉掛け用つりチェーン(第216条) | ① 伸びが製造されたときの長さの 5パーセントを超える もの ② リンクの断面の直径の減少が製造されたときの 10パーセントを超える もの ③ き裂があるもの |
| フック・シャックル・リング等の金具(第217条) | 変形しているもの、またはき裂があるもの |
| 玉掛け用繊維ロープ・繊維ベルト(ベルトスリング)(第218条) | ① ストランドが切断しているもの ② 著しい損傷又は腐食があるもの(ベルトスリングは織り込まれた赤色等の使用限界標示=シグナルラインが見えたら即廃棄) |
チェーンは「伸び 5%超・摩耗 10%超・き裂」、ワイヤロープは「素線切れ 10%以上・摩耗 7%超・キンク」と数値が異なるため、表で対比して押さえておくのが得点のコツです。
よくある質問
- 玉掛け用ワイヤロープの安全係数はいくつですか?
- クレーン等安全規則第213条により、玉掛け用ワイヤロープの安全係数は「6以上」と定められています。ワイヤロープ1本の切断荷重を6で割った値が、1本あたりの基本使用荷重(安全荷重)になります。
- 玉掛け用ワイヤロープの廃棄基準(使用禁止基準)は何ですか?
- クレーン等安全規則第215条により、①ワイヤロープ1よりの間で素線(フィラ線を除く)の数の10%以上が切断しているもの、②直径の減少が公称径の7%を超えるもの、③キンクしたもの、④著しい形崩れまたは腐食があるもの、の4つは玉掛けに使用してはなりません。
- 玉掛けのつり角度は何度以内にしますか?
- 厚生労働省の玉掛け作業の安全に係るガイドラインは、つり角度を原則90度以内としています。2本4点の半掛けつりやクランプを使う作業など、個別の作業では60度以内とされています。つり角度が大きくなるほどワイヤロープ1本にかかる張力は増え、60度で約1.155倍(教材の表は1.16)、90度で約1.41倍、120度で2.0倍(1本吊りと同じ負荷)になります。
- つりチェーンやベルトスリングの安全係数はワイヤロープと同じですか?
- 異なります。クレーン等安全規則第213条・第213条の2により、玉掛け用ワイヤロープは6以上、玉掛け用つりチェーンは5以上(一定の条件を満たすものは4以上)と定められています。ベルトスリングの安全係数は法令には定めがなく、日本クレーン協会規格で6以上とされています。