玉掛け技能講習の学科試験・実技試験と計算問題の解き方
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玉掛け技能講習は、講習の最後に「修了試験」があります。
学科と実技の両方に合格しないと、修了証はもらえません。
この記事では、試験に出る科目、合格の基準がどこで決まるか、つまずきやすい計算問題の考え方をまとめます。計算の例題は、この記事のために作ったものです。
講習の時間や料金を知りたい人は、玉掛け技能講習の時間と費用をご覧ください。
練習問題をまとめて解きたい人向けに、編集部の問題集も出しています(玉掛け学科試験の問題集)。
修了試験は学科と実技の2つ
玉掛け技能講習規程(昭和47年労働省告示第119号)第5条で、修了試験について次のように決まっています。
- 技能講習では修了試験を行う
- 修了試験は、学科試験と実技試験の2つ
- 学科試験は、学科講習の科目について、筆記試験か口述試験で行う
- 実技試験は、実技講習の科目について行う
試験のくわしいやり方は、厚生労働省労働基準局長が定めるところによるとされています。
学科の科目と時間
学科講習の科目と時間は、講習規程の第2条で決まっています。19時間コースの場合は次のとおりです。
| 科目 | おもな内容 | 時間 |
|---|---|---|
| クレーン等に関する知識 | クレーンの種類と型式、構造と機能、安全装置とブレーキ | 1時間 |
| 玉掛けに必要な力学に関する知識 | 力の合成・分解・つり合い・モーメント、重心と安定、摩擦、質量、速度と加速度、荷重、応力、玉掛用具の強さ | 3時間 |
| 玉掛けの方法 | 玉掛けの一般的な作業方法、玉掛用具の選び方と使い方、基本動作、合図の方法 | 7時間 |
| 関係法令 | 労働安全衛生法、施行令、労働安全衛生規則、クレーン等安全規則の関係する条文 | 1時間 |
学科は合計12時間です。計算問題が出るのは、おもに「力学に関する知識」の科目です。
実技の科目と時間
| 科目 | おもな内容 | 時間 |
|---|---|---|
| クレーン等の玉掛け | 質量の目測、玉掛用具の選び方と使い方、0.5トン以上の荷での基本作業と応用作業 | 6時間 |
| クレーン等の運転のための合図 | 手や小旗などを使う合図 | 1時間 |
実技は合計7時間です。実技試験も、この範囲から出ます。
出典:玉掛け技能講習規程第2条・第5条(2026年10月確認)
免除がある人は、試験の科目も減る
講習規程の第3条では、次の人は「力学に関する知識」と「運転のための合図」の受講を免除できます。
- クレーン・デリック運転士免許、移動式クレーン運転士免許、揚貨装置運転士免許を持っている人
- 床上操作式クレーン運転技能講習や小型移動式クレーン運転技能講習を修了した人
この場合、講習は15時間になり、計算の多い力学の科目は受けません。
ただし、免除は申し込みのときに資格の写しを出して決まるのがふつうです。たとえば日本クレーン協会近畿支部は、受講の当日などに免除の扱いはしないと案内しています(日本クレーン協会近畿支部「玉掛け技能講習」、2026年10月確認)。
合格の基準は講習所の業務規程で決まる
告示の講習規程には、「何点で合格」という数字は書かれていません。
厚生労働省の登録教習機関の登録申請の案内では、講習所が労働局に出す業務規程に、修了試験の「試験時間、試験方法、出題方法、合格基準等」を書くことになっています。
つまり、合格の基準は講習所ごとに決めて届け出ているものです。
講習所が公表している例を1つ挙げます。
| 講習所 | 学科試験 | 実技試験 |
|---|---|---|
| 岡山トレーニングセンター(岡山県) | 各科目40%以上、かつ合計60%以上 | 70%以上 |
出典:岡山トレーニングセンター「玉掛け資格は簡単?技能講習の難易度と合格のコツ」(2026年10月確認)
この例のように「各科目40%以上」という決まりがあると、合計点が高くても、1つの科目だけ低いと落ちることがあります。苦手な科目を作らないことが大事です。
受ける講習所の基準は、申し込みのときに聞くか、講習の初日の説明で確かめてください。
計算問題の考え方と例題
ここからは、力学の科目でよく扱う4つの計算を、自作の例題で説明します。
数字はわかりやすくするために丸めています。講習で配られる教本の表と、小数の丸め方がちがうことがあります。試験では教本の表に合わせてください。
法令・告示や厚生労働省の資料などをもとに作った練習問題は、学科試験の練習問題(30問)にまとめています。選択肢を押すと、その場で答えと解説が見られます。
なお、玉掛けの計算でいう「質量」の単位はトン(t)です。1トンの物にかかる重さ(重力)は、およそ9.8キロニュートン(kN)です。
1. 質量の計算:体積 × 1立方メートルあたりの質量
荷の質量は、次の式で求めます。
質量(t)= 体積(m³)× 1m³あたりの質量(t/m³)1m³あたりの質量は、材料で決まります。試験では問題文や教本の表に書かれた数字を使います。
例題1 鋼の板があります。たて2.0m、よこ1.5m、厚さ0.05mです。鋼の1m³あたりの質量を7.85tとして、この板の質量を求めてください。
答え:約1.18t
解き方:
- 体積 = 2.0 × 1.5 × 0.05 = 0.15m³
- 質量 = 0.15 × 7.85 = 1.1775t
- 小数第3位を四捨五入して、約1.18t
例題2 鋼の丸い棒があります。直径0.4m、長さ3.0mです。1m³あたりの質量を7.85t、円周率を3.14として、質量を求めてください。
答え:約2.96t
解き方:
- 半径は 0.4 ÷ 2 = 0.2m
- 底の円の面積 = 0.2 × 0.2 × 3.14 = 0.1256m²
- 体積 = 0.1256 × 3.0 = 0.3768m³
- 質量 = 0.3768 × 7.85 = 2.95788t、約2.96t
丸い物は「直径」で書かれることが多いです。半径に直すのを忘れるミスがよくあるので、気をつけてください。
2. つり角度と張力:角度が広いほど1本の負担が増える
「つり角度」は、2本のワイヤロープが上のフックのところで作る角度です。
つり角度が広がると、ロープが荷を横に引っぱる力も生まれます。そのぶん、1本のロープにかかる力(張力)は大きくなります。
1本にかかる張力は、次の式で求めます。
1本の張力 =(荷の質量 ÷ つり本数)× 張力係数張力係数は、つり角度の半分の角度の余弦(cos)の逆数です。計算値と、教材の表の値は次のとおりです。60度は計算すると約1.155ですが、教材の表は1.16です。
| つり角度 | 計算値 | 教材の表 | 意味 |
|---|---|---|---|
| 0度(まっすぐ) | 1.00 | 1.00 | 荷の質量を本数で割っただけ |
| 30度 | 約1.035 | 1.04 | 4%ほど増える |
| 60度 | 約1.155 | 1.16 | 16%ほど増える |
| 90度 | 約1.414 | 1.41 | 4割ほど増える |
| 120度 | 2.00 | 2.00 | 2倍になる |
120度では、2本でつっても、1本ずつに荷の質量と同じ力がかかります。2本でつる意味がなくなる角度です。
厚生労働省の玉掛け作業の安全に係るガイドライン(平成12年2月24日 基発第96号)でも、つり角度は原則として90度以内にするよう書かれています。
例題3 質量2.4tの荷を、2本2点つりでつります。つり角度は60度です。ワイヤロープ1本にかかる張力は何tですか。張力係数は1.16とします。
答え:約1.39t
解き方:
- 本数で割る:2.4 ÷ 2 = 1.2t
- 張力係数をかける:1.2 × 1.16 = 1.392t
- 約1.39t
例題4 例題3と同じ荷を、つり角度120度でつると、1本の張力はいくつですか。
答え:2.4t
解き方:1.2 × 2.00 = 2.4t。荷の質量と同じ力が、1本ずつにかかります。
3. 安全荷重と安全係数:切断荷重の6分の1まで
ワイヤロープには、引っぱって切れるときの力「切断荷重」があります。
クレーン等安全規則第213条では、玉掛け用ワイヤロープの安全係数を6以上にしなければならないと決めています。安全係数は、切断荷重を、ロープにかかる荷重の最大の値で割った値です。
つまり、ワイヤロープ1本に安全にかけられる荷重(安全荷重)は、切断荷重の6分の1までです。
安全荷重 = 切断荷重 ÷ 6
ほかの玉掛用具の安全係数も、同じ規則で決まっています。
- フック・シャックル:5以上(第214条)
- つりチェーン:種類によって4以上または5以上(第213条の2)
例題5 切断荷重が72kNのワイヤロープがあります。1本の安全荷重は何kNですか。また、質量になおすと約何tですか(1tの重さを9.8kNとします)。
答え:12kN、約1.22t解き方:
- 安全荷重 = 72 ÷ 6 = 12kN
- 質量になおす:12 ÷ 9.8 = 1.224…、約1.22t
例題6 例題3の荷(1本の張力が1.392t)をつるには、ワイヤロープの切断荷重は何kN以上必要ですか。1tの重さを9.8kNとします。
答え:約81.9kN以上
解き方:
- 張力を力になおす:1.392 × 9.8 = 13.6416kN
- 安全係数6をかける:13.6416 × 6 = 81.8496kN
- 約81.9kN以上の切断荷重が必要
単位をtのまま計算する問題と、kNになおす問題があります。問題文の単位をよく見てください。
4. モード係数:何本で、何度でつるとどこまでつれるか
「モード係数」は、つり方(本数とつり角度)で、ロープ1本の安全荷重の何倍までつれるかを表す数です。
ロープ1本でまっすぐつるときに安全につれる質量を「基本安全荷重」といいます。
つれる質量 = 基本安全荷重 × モード係数
モード係数は、すべてのロープに同じだけ力がかかるとすると、「本数 ÷ 張力係数」で求められます。
| つり角度 | 2本つり | 4本つり |
|---|---|---|
| 0度 | 2.00 | 4.00 |
| 30度 | 約1.93 | 約3.86 |
| 60度 | 約1.73 | 約3.46 |
| 90度 | 約1.41 | 約2.83 |
| 120度 | 1.00 | 2.00 |
講習の教本や、ロープの販売店の表では、「30度まで」「60度まで」のように角度の範囲で区切り、小数第2位以下を切り捨てた値(60度までの2本つりなら1.7など)を使うことがあります。試験では教本の表の数字を使ってください。
例題7 基本安全荷重が1.0tのワイヤロープ2本で、2本2点つりをします。つり角度は60度です。モード係数を1.7とすると、何tまでつれますか。
答え:1.7t
解き方:1.0 × 1.7 = 1.7t
例題8 例題7と同じつり方で、質量2.0tの荷をつってよいですか。
答え:つってはいけない
解き方:つれるのは1.7tまでで、2.0tはそれをこえます。もっと太いロープを選ぶか、つり角度を小さくする(ロープを長くする)などの方法を考えます。
例題7は、張力の式でも確かめられます。1.7tの荷なら、1本の張力は 1.7 ÷ 2 × 1.16 = 0.986t で、基本安全荷重の1.0tにおさまります。
おまけ:重心とモーメント
力学の科目には、重心とモーメントも入っています。
例題9 長さ3mの軽い棒の左はしに1t、右はしに2tの荷がついています。棒の重さは考えないものとして、どこをつればつり合いますか。
答え:左はしから2mのところ
解き方:つる位置を左はしから x m とすると、左右のモーメント(質量 × きょり)が等しくなればつり合います。
- 1 × x = 2 ×(3 − x)
- x = 6 − 2x
- 3x = 6、x = 2
重い荷のほうに重心がよる、と覚えておくと答えの見当がつけやすくなります。
合格率の目安
国や労働局が公表した、玉掛け技能講習の合格率の統計は見つかりませんでした(2026年10月確認)。
講習所のコラムには、次のように書かれている例があります。
- 東京技能講習協会:合格率は90%以上(東京技能講習協会のコラム)
- 岡山トレーニングセンター:多くの教習所で合格率は90%以上とされる(岡山トレーニングセンターのコラム)
どちらも、どの期間に何人が受けたかといった集計の方法は示されていません。目安として受け取ってください。
落ちやすいところ
公表された統計はないため、ここでは講習所の案内や講習の決まりから、つまずきやすいところをまとめます。
欠席や遅刻
講習の時間は告示で決まっているので、全部の時間を受ける必要があります。
日本クレーン協会近畿支部は、欠席や遅刻による不合格もあると案内しています(同支部の案内)。集合時間と持ち物は前日までに確かめてください。
1つの科目だけ点が低い
前の章のように「各科目40%以上」という基準がある講習所では、合計点が足りていても落ちることがあります。
計算が苦手な人は、この記事の4つの式(質量、張力、安全荷重、モード係数)だけでも、くり返し解いておくと安心です。
単位と丸め方のまちがい
計算問題では、次のミスが起きやすいです。
- 直径を半径に直し忘れる
- tとkNをまぜて計算する
- 本数で割る前に張力係数をかけ忘れる
答えを出したら、「つり角度が広いほど張力は大きくなるはず」のように、向きが合っているか見直してください。
実技の合図と基本動作
実技では、手や小旗を使う合図と、玉掛けの基本動作を行います。講習で教わった順番や声の出し方どおりに動けるよう、講習中の練習を大事にしてください。
落ちたときの再受講・再試験
落ちたときの扱いは、講習所によって大きく違います。2026年10月に各講習所の公式ページで確かめた例です。
| 講習所 | 扱い | 費用 |
|---|---|---|
| 日本クレーン協会近畿支部(大阪府) | 学科か実技の片方だけ不合格のとき、講習修了後2か月以内に再受講できる。両方不合格のときはこの制度はない | 再受講料8,000円(税込) |
| 大宮自動車教習所 建設機械講習センター(茨城県) | 学科・実技それぞれ再試験 | 1回2,200円(税込) |
| 角田建設機械講習所(宮城県) | 学科試験・実技試験の追試験 | 追加料金なし |
出典:日本クレーン協会近畿支部、大宮自動車教習所 建設機械講習センター、角田建設機械講習所
再試験の制度が使えない場合は、もう一度申し込んで、はじめから受け直すことになります。
申し込む前に、次の2点を講習所に聞いておくと安心です。
- 不合格のとき、再試験か再受講があるか、費用はいくらか
- いつまでに受け直す必要があるか
講習所の料金や日程は、東京都の玉掛け技能講習や玉掛け技能講習の時間と費用で調べられます。
会社の仕事で受ける場合は、受講料が助成の対象になることがあります。
まとめ
- 修了試験は学科と実技の2つで、両方の合格が必要(玉掛け技能講習規程第5条)
- 学科は4科目12時間、実技は2科目7時間(19時間コース)。免許などがある人は力学と合図が免除
- 合格の基準は講習所の業務規程で決まる。例として「学科は各科目40%以上・合計60%以上、実技70%以上」
- 計算は「質量=体積×1m³あたりの質量」「張力=質量÷本数×張力係数」「安全荷重=切断荷重÷6」「つれる質量=基本安全荷重×モード係数」の4つ
- 公的な合格率の統計はない。落ちたときの扱いは講習所ごとに違うので、申し込む前に確かめる
よくある質問
- 玉掛け技能講習の学科試験はどんな科目ですか?
- 玉掛け技能講習規程で決められた学科の4科目(クレーン等に関する知識、玉掛けに必要な力学に関する知識、玉掛けの方法、関係法令)から出ます。クレーンの運転士免許や床上操作式・小型移動式クレーンの技能講習を持っている人は、力学の科目が免除されます。
- 合格の基準は何点ですか?
- 国の告示には点数の基準は書かれていません。合格の基準は、講習所ごとに労働局へ届け出る業務規程で決まります。たとえば岡山トレーニングセンターは、学科は各科目40%以上かつ合計60%以上、実技は70%以上と案内しています(2026年10月確認)。受ける講習所の案内で確かめてください。
- 玉掛け技能講習の合格率は?
- 国や労働局が公表した合格率の統計は見つかりませんでした。講習所のコラムには「90%以上」と書かれている例がありますが、集計の方法は示されていません。
- 落ちたらどうなりますか?
- 講習所によって違います。学科か実技の片方だけ落ちた人に、再受講料8,000円で2か月以内の再受講を認める講習所や、再試験1回2,200円の講習所、追試験の追加料金なしの講習所があります(2026年10月確認)。申し込む前に確かめておくと安心です。