玉掛けの特別教育でできるのは1トン未満まで:科目と時間・費用・技能講習との違い

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工場内で小型ホイストクレーンのフックに玉掛け用具を掛ける作業者

つり上げ荷重が1トン未満のクレーン・移動式クレーン・デリックで玉掛けをするだけなら、玉掛けの特別教育(学科5時間・実技4時間)で足ります。

1トン以上の機械で玉掛けをするなら、玉掛け技能講習(19時間)の修了などが必要です。どちらになるかは、荷の重さではなく、機械の「つり上げ荷重」で決まります。

この記事では、玉掛けにしぼって、特別教育の範囲・科目・費用と、技能講習との違いをくわしく説明します。

この記事の法令は、2026年10月9日に e-Gov 法令検索 の条文と、厚生労働省の法令等データベースの告示で確かめた内容です。費用は、講習所の公式ページで2026年10月に確認した例です。

玉掛けの特別教育で、何トンまで玉掛けできる?

玉掛け特別教育(1トン未満)と技能講習(1トン以上)の境界図
クレーン等のつり上げ荷重1トンを境にした資格区分と作業範囲

玉掛けの特別教育でできるのは、つり上げ荷重が1トン未満のクレーン・移動式クレーン・デリックの玉掛けまでです。

条文では、次のように分かれています。

機械のつり上げ荷重 必要なもの 根拠の条文
1トン未満 玉掛けの特別教育 労働安全衛生規則第36条第19号、クレーン等安全規則第222条
1トン以上 玉掛け技能講習の修了など 労働安全衛生法施行令第20条第16号、クレーン等安全規則第221条

根拠:労働安全衛生規則第36条第19号、労働安全衛生法施行令第20条第16号、クレーン等安全規則第221条・第222条

1トン以上の玉掛けは、技能講習のほかに、職業訓練の玉掛け科を修了した人なども行えます(クレーン等安全規則第221条第2号・第3号)。この記事では、多くの人が受ける技能講習を例に説明します。

荷の重さではなく「つり上げ荷重」で決まる

境目の1トンは、機械のつり上げ荷重のことです。つる荷の重さではありません。

つり上げ荷重は、クレーンなどの構造と材料から決まる、かけられる最大の荷重のことです(労働安全衛生法施行令第10条第1号)。

たとえば、つり上げ荷重2.8トンの天井クレーンで、100キロの荷を玉掛けする場合を考えます。荷は軽くても、機械は1トン以上なので、玉掛け技能講習が必要です。

自分の現場のクレーンのつり上げ荷重は、機械の銘板などの表示で確かめてください。

特別教育だけではクレーンの運転はできない

玉掛けの特別教育は、荷にワイヤロープなどを掛けたり外したりする仕事のための教育です。クレーンを運転する資格ではありません。

運転には、機械に合わせて別の教育や講習が要ります。

  • クレーン(つり上げ荷重5トン未満)の運転:クレーンの特別教育(労働安全衛生規則第36条第15号)
  • 移動式クレーン(つり上げ荷重1トン未満)の運転:移動式クレーンの特別教育(同第16号)
  • 移動式クレーン(1トン以上5トン未満)の運転:小型移動式クレーン運転技能講習など(施行令第20条第7号)

ひとりで運転と玉掛けの両方をするなら、両方の資格が必要です。

0.5トン未満のクレーンについての注意

クレーン等安全規則は、つり上げ荷重0.5トン未満のクレーン・移動式クレーン・デリックには使われません(同規則第2条第1号)。一方で、労働安全衛生規則第36条第19号には下限が書かれていません。

0.5トン未満の小さなクレーンで玉掛けをする場合の扱いは、この記事では確かめきれていません(未確認)。気になる場合は、会社の所在地の労働基準監督署に聞いてください。

玉掛けの特別教育の科目と時間は?

玉掛けの特別教育は、学科5時間以上・実技4時間以上、合計9時間以上です。

科目はクレーン等安全規則第222条第2項で決まっています。範囲と時間は、クレーン取扱い業務等特別教育規程(昭和47年労働省告示第118号)第5条で決まっています。

科目 おもな内容 時間
クレーン等に関する知識 クレーン・移動式クレーン・デリックの種類と型式、構造と機能、安全装置とブレーキ 1時間
玉掛けに必要な力学に関する知識 力の合成・分解・つり合い・モーメント、簡単な形の重心と物の安定、摩擦、重量、荷重 1時間
玉掛けの方法 玉掛用具の選び方と使い方、基本動作(安全な作業のしかたを含む)、合図のしかた 2時間
関係法令 労働安全衛生法・施行令・労働安全衛生規則・クレーン等安全規則のうち関係する条文 1時間
科目 おもな内容 時間
クレーン等の玉掛け 材質や形のちがう2つ以上の物の重さの目測、玉掛用具の選び方、玉掛けのしかた 3時間
クレーン等の運転のための合図 手や小旗などを使う合図 1時間

出典:クレーン取扱い業務等特別教育規程第5条第2項・第3項(2026年10月確認)

告示の時間は、最低限の時間です。ただし、その科目について十分な知識と技能がある人は、会社(事業者)がその科目の全部または一部を省略できます(労働安全衛生規則第37条)。講習所によっては、こうした人向けに時間を短くしたコースもあります。

告示には、特別教育の修了試験の決まりはありません。技能講習のように、試験に受からないと修了できない仕組みとは違います。

誰が行う?外部の講習所で受けてもいい?

玉掛けの特別教育を行うのは、事業者(会社)です。会社は、外部の講習所に任せることもできます。

クレーン等安全規則第222条第1項で、1トン未満の玉掛けの仕事に労働者をつかせるときは、会社が特別教育をしなければならないと決まっています。もとになる条文は労働安全衛生法第59条第3項です。

会社がこれに違反すると、6か月以下の拘禁刑または50万円以下の罰金の対象になります(労働安全衛生法第119条第1号)。

社内で行うか、外部に任せるか

  • 社内で行う:告示の科目と時間を守れば、会社の中で行えます。告示には、講師の資格の決まりは書かれていません。教える人には、玉掛けの知識と経験が十分ある人を選ぶのが自然です。
  • 外部の講習所に任せる:労働基準協会や民間の講習所などが、玉掛けの特別教育を開いています。個人で申し込める講習所もあります。

外部に任せた場合も、決まった科目と時間どおりに行われたかを確かめるのは会社です。

学科をeラーニングで受ける場合

学科は、インターネットのeラーニングで受けられる講座もあります。

厚生労働省の通達では、eラーニングで特別教育を行う場合でも、実技は講師と同じ場所で、対面で行うこととされています(「インターネット等を介したeラーニング等により行われる労働安全衛生法に基づく安全衛生教育等の実施について」令和3年1月25日)。

たとえば、CIC日本建設情報センターのWeb講座は学科だけで、実技4時間以上は受講者の会社で行う形です(CIC日本建設情報センター「玉掛けの業務に係る特別教育」、2026年10月確認)。実技を自社でできるかどうかを、申し込む前に考えておく必要があります。

修了証はもらえる?記録はどうする?

特別教育には、法令で決まった修了証はありません。そのかわり、会社が記録を作って3年間保存します。

労働安全衛生規則第38条で、会社は特別教育をしたとき、受けた人や科目などの記録を作り、3年間保存することになっています。

外部の講習所で受けると、講習所が独自の修了証を出すことがあります。たとえば東京技能講習協会は、修了した日にカードの修了証を出すと案内しています(東京技能講習協会「玉掛け特別教育」、2026年10月確認)。

転職したら受け直し?

転職先の会社が判断します。

労働安全衛生規則第37条では、十分な知識と技能がある人について、会社は特別教育の科目の全部または一部を省略できます。前の会社の記録や、講習所の修了証は、その判断の材料になります。修了証は、なくさずに持っておくと安心です。

技能講習の修了証は、法令で決まった書面で、玉掛けの仕事をするときは持っていなければなりません(労働安全衛生法第61条第3項)。会社が変わっても、そのまま使えます。

玉掛けの特別教育の費用と日数はどれくらい?

講習所で受ける場合、9時間・1〜2日・2万円弱の例があります。

2026年10月に、講習所の公式ページで確かめた例です。

講習所 時間・日数 受講料 備考
東京技能講習協会(東京都江戸川区) 9時間・1日 17,000円(テキスト代・税込) 修了した日に修了証のカードを出す
労働安全衛生推進協会 二日市教習室(福岡県筑紫野市) 9時間・2日 17,900円(税込、2027年3月31日まで。4月1日からは18,900円) 免除のある人向けに、時間や日数を短くした講習もある
CIC日本建設情報センター(Web講座) 学科5時間のみ 11,000円〜(税込) 実技4時間以上は自社で行う。修了証のカードは選んだ場合に出す

出典:東京技能講習協会「玉掛け特別教育」・同「講習料金一覧」、労働安全衛生推進協会「玉掛け特別教育」、CIC日本建設情報センター

会社の中で行う場合は、受講料がかからないこともあります。料金や日程は変わることがあるので、申し込む前に公式ページで確かめてください。

技能講習の費用と比べると

玉掛け技能講習(19時間)の受講料は、このサイトで集めた全国の一般向け講習所で、真ん中の値が約27,800円です(料金が分かる438か所、2026年10月時点)。日数は3日がふつうです。

同じ東京技能講習協会では、特別教育が17,000円、技能講習(19時間)が25,000円(どちらもテキスト代・税込)でした。差は8,000円です。

県ごとの講習所と料金は、玉掛け技能講習の時間と費用から選べます。

玉掛けの特別教育と技能講習の違いは?

いちばんの違いは、玉掛けできる機械の大きさです。特別教育は1トン未満、技能講習は1トン以上(1トン未満も含めて)を扱うためのものです。

項目 玉掛けの特別教育 玉掛け技能講習
玉掛けできる範囲 つり上げ荷重1トン未満のクレーン・移動式クレーン・デリック つり上げ荷重1トン以上も
行うところ 会社(外部の講習所に任せることもできる) 都道府県労働局長の登録を受けた講習所
時間 学科5時間・実技4時間(合計9時間) 学科12時間・実技7時間(合計19時間。免除がある人は15時間など)
修了試験 告示に決まりはない 学科・実技の両方
証明 会社が記録を3年間保存。講習所が独自の修了証を出すことがある 講習所が技能講習修了証を出す
仕事中の携帯 法令の決まりはない 修了証などを持っていなければならない
費用の例 17,000〜17,900円(講習所の例) 真ん中の値 約27,800円(19時間)

根拠:クレーン取扱い業務等特別教育規程第5条、玉掛け技能講習規程第2条・第5条、労働安全衛生法第61条、労働安全衛生規則第38条

科目ごとの時間の違い

科目の名前は、特別教育と技能講習でほぼ同じです。違うのは時間で、とくに「力学」と「玉掛けの方法」が長くなります。

科目 特別教育 技能講習
クレーン等に関する知識(学科) 1時間 1時間
玉掛けに必要な力学に関する知識(学科) 1時間 3時間
玉掛けの方法(学科) 2時間 7時間
関係法令(学科) 1時間 1時間
クレーン等の玉掛け(実技) 3時間 6時間
クレーン等の運転のための合図(実技) 1時間 1時間
合計 9時間 19時間

技能講習の力学では、質量、速度と加速度、応力、玉掛用具の強さなども学びます。実技では、0.5トン以上の荷で基本作業と応用作業を行います(玉掛け技能講習規程第2条)。

技能講習の試験や計算問題は、玉掛け技能講習の試験と計算問題でくわしく説明しています。

法令・告示や厚生労働省の資料などをもとに作った練習問題は、学科試験の練習問題(30問)にまとめています。選択肢を押すと、その場で答えと解説が見られます。

特別教育と技能講習、どちらを受ければいい?

決め手は、これから玉掛けをする機械のつり上げ荷重です。

次の順に考えると決めやすくなります。

  1. 使う機械がすべて1トン未満で、これからも変わらない:特別教育で足ります。会社が社内で行うか、講習所を指定することが多いので、まず会社に聞いてください。
  2. 1トン以上の機械が1台でもある:技能講習が必要です。特別教育だけで1トン以上の玉掛けをすると、法令違反になります(労働安全衛生法第61条第1項・第2項)。
  3. これから転職する・仕事の幅を広げたい:技能講習が向いています。法令で決まった修了証が出るので、会社が変わってもそのまま使えます。

求人で、どちらがどのくらい求められているかの統計は見つかりませんでした。応募したい求人があれば、「玉掛け技能講習」と書かれているか、「玉掛け(1トン未満)」なのかを確かめてください。

技能講習を修了していれば、1トン未満の特別教育はいらない?

技能講習の科目は、特別教育の科目をすべて含み、時間も長くなっています。

労働安全衛生規則第37条では、十分な知識と技能がある人について、会社は特別教育を省略できます。技能講習の修了者について省略するかどうかを判断するのは、会社です。

特別教育のあとで技能講習を受けると短くなる?

特別教育を受けただけでは、技能講習は短くなりません。

ただし、つり上げ荷重1トン未満の玉掛けの仕事を6か月以上した人は、技能講習が15時間になります(玉掛け技能講習規程第4条第2項)。

区分 受けられる人 根拠
19時間 免除のない人(はじめての人) 第2条
16時間 1トン以上のクレーンなどの玉掛けの補助作業を6か月以上した人など 第4条第1項
15時間 1トン未満のクレーンなどの玉掛けの仕事を6か月以上した人 第4条第2項
15時間 クレーン・デリック運転士免許などを持つ人、床上操作式クレーン・小型移動式クレーンの技能講習を修了した人 第3条

経験で短くなる区分は、どの講習所でも開いているわけではありません。たとえば東京技能講習協会の玉掛け技能講習の案内には、免許・技能講習による15時間コースはありますが、仕事の経験で短くなるコースは書かれていません(2026年10月確認)。経験をどう証明するかも含めて、申し込む前に講習所に聞いてください。

小型移動式クレーンや床上操作式クレーンの技能講習も受ける予定なら、先にそちらを修了すると、玉掛け技能講習が15時間になります。

会社の仕事で受ける場合は、受講料が助成の対象になることがあります。履歴書には、特別教育と技能講習を書き分けてください。

まとめ

  • 玉掛けの特別教育でできるのは、つり上げ荷重1トン未満のクレーン・移動式クレーン・デリックの玉掛けまで。1トン以上は玉掛け技能講習などが必要
  • 1トンの境目は、荷の重さではなく、機械のつり上げ荷重で決まる
  • 特別教育は学科5時間・実技4時間の合計9時間以上。告示に試験の決まりはない
  • 特別教育は会社が行う。外部の講習所に任せることもでき、会社は記録を3年間保存する
  • 講習所の例では、9時間・1〜2日で17,000〜17,900円(税込)
  • 1トン未満の玉掛けを6か月以上した人は、技能講習が15時間になる

1トン以上の玉掛けをする予定なら、玉掛け技能講習の時間と費用から、近くの講習所と料金を調べてみてください。

よくある質問

玉掛けの特別教育で、何トンまで玉掛けができますか?
つり上げ荷重が1トン未満のクレーン・移動式クレーン・デリックの玉掛けまでです(労働安全衛生規則第36条第19号、クレーン等安全規則第222条)。つり上げ荷重が1トン以上なら、玉掛け技能講習の修了などが必要です(労働安全衛生法施行令第20条第16号、クレーン等安全規則第221条)。荷の重さではなく、クレーンなどの「つり上げ荷重」で決まります。
玉掛けの特別教育は何時間ですか?
告示(クレーン取扱い業務等特別教育規程第5条)で、学科5時間以上・実技4時間以上と決まっています。合計9時間で、1日で終える講習所も、2日に分ける講習所もあります。
玉掛けの特別教育に試験はありますか?
告示には、特別教育の修了試験の決まりはありません。技能講習は、学科と実技の修了試験に合格する必要があります(玉掛け技能講習規程第5条)。
玉掛けの特別教育の費用はいくらですか?
講習所で受ける場合の例では、東京技能講習協会が9時間・1日で17,000円(テキスト代・税込)、労働安全衛生推進協会(福岡県)が9時間・2日で17,900円(税込、2027年3月31日まで)です(2026年10月確認)。会社の中で行う場合は、受講料がかからないこともあります。
特別教育を受けたあとで玉掛け技能講習を受けると、時間は短くなりますか?
特別教育を受けただけでは短くなりません。つり上げ荷重1トン未満の玉掛けの仕事を6か月以上した人は、技能講習が15時間になります(玉掛け技能講習規程第4条第2項)。この区分を開いていない講習所もあるので、申し込む前に確かめてください。